科挙―中国の試験地獄 (中公文庫BIBLIO)



科挙―中国の試験地獄 (中公文庫BIBLIO)

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名著ここにあり?プリンシプルのない日本を映す鏡

中国王朝の官僚登用試験である科挙制度を平明にかつ興味深いエピソードを多く交えて解説する名著。
受験生である「挙生」のエピソードを採りあげるのは、一般の読者の興味をそそるからかと思いきや、実はどのような制度にもフォーマルな面とインフォーマティブな面があるのであって、制度的にどのようなものだったのかを記すだけでは、片手落ちになる。そのため、実情を読者に紹介しようという著者の配慮がいきとどいているのである。
本書に通底しているのは、著者宮崎先生のやや諧謔味を帯びた軽妙な文章である。つねに視線は現代から伸びていて、過去にはまりこむということがない。さりとて、過去を蔑むことも現代を自嘲することもない。シニカルさの中の優しさが読んでいて心地よい。
通読して思ったことは、「四書五経」を重視するあまり、実学を省みなかったために清国は滅んだが、しかし、それに学んだ近代日本は逆に実学重視のあまり、今だプリンシプルが欠如しているのではないか?という疑問である。大学では人文系学部より研究が実利に結びつく理工系学部が幅をきかせ、一方安部首相の愛読書は未だに吉田松陰というのはどういうものだろうか。
ところで、宮崎市定『科挙』にはもうひとつ戦中に書かれ、昭和21年に出版された版があり、高島俊男氏はこちらを推薦している。現在は、講談社東洋文庫または『宮崎市定全集』に『科挙史』の名前で収録されている。本書を読了した方は、そちらに挑戦してはいかがだろうか。
人間社会の面白さ

文学の大テーマにも成りうる、
人間社会の縮図が描かれていると言ったら大袈裟か。

狂的なまでに平等・公平を追求する試験制度でありながら、
遂にその平等・公平を実現し切れなかった科挙。
そこのところをもっともっと掘り下げていけば、
普遍的な人間社会の限界が見えてくるようで、読んでいてワクワクした。

人知の圏外にある運・不運が如何に「平等・公平」を掲げる人間の小細工を、
いとも簡単に吹き飛ばし、人々の人生に切り込んでくるのか。

本を手にとり、数万語が書かれた「カンニング下着」(この文庫本に写真が収録されている)を見る度に、ここに描かれる無数の男達の人生―――青年期のみならず、壮年期、或いは一生を科挙に費やした男達の切ない人生、どこか滑稽で、悲しい人生―――がそこに集約されているような気がした。
斯くも恐ろしき試験地獄。

同名新書を文庫サイズにしたものであるが、こ
ちらのほうが印刷がきれいで読みやすい。かなり
細かい、重箱をつついたような知識も載せてあるが
故事や科挙の評価のところを重点的に読めば十分
だと思う。カンニングを防ぐために試験回数がとんでも
ないくらいに膨れ上がり、政府は教育に関与せず、受験
者の負担も地獄の域に達していったことが本からよく読
み取れる。科挙は文治主義を中国王朝において定着させ
るなどいい面もあったが、システム化が進み柔軟性を欠き
結果的に中国の近代化を遅らせてしまったと指摘している。
個人的に驚いたのは高校の時殿試は面接試験と聞いていたのが
実際にはペーパーテストで行われていたというところだった。
間違えて覚えてしまったのかしら・・・。
受験の元祖「科挙」

幼稚園から大学に至る現代の受験の歴史は、中国の科挙に始まる。

模試、定期テスト、大学入試、試験のたびに湧き上がってきた疑問が、この本を読んで氷解しました。制度としての試験とそれに寄せる人々の期待感、夢、野心。公平性を保つための厳しい制裁制度にもかかわらず、止むに止まれぬカンニング。数百年に渡る受験生の悲喜こもごもが、詳細なリサーチに基づいて正確に描き出されています。

科挙に応ずる受験生の様子が、昨日の出来事を見るように鮮明に浮かんでくるのは、往時中国史の第一人者と知られた著者ならではの考証によるもです。
努力と確率次第で、一旦登用されれば、栄華は思いのまま。でも、受からなければ、ただの人以下。
すべてを投げ打って、宝くじと同じ合格率に人生を賭けた男たちの物語です。



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